【Kissの会 ゲスト投稿no.36】     「コスタリカへの旅」

              2019-03-21 (7期生) 近藤 秀子 さん

 

平和憲法を掲げ、軍備を無くしたコスタリカ。国の年間予算の30%を占める軍事費をすっぱりと削り、そのお金を医療・教育・福祉に当てている。そのようなことが本当にできるのだろうか。不思議に思った。中米コスタリカはパナマとニカラグアに挟まれた小さな国だ。面積は北海道の70%、人口500万人。こんな小さな国が何も軍備をもたないとしたら、簡単に攻め込まれるのではないか。しかし、コスタリカの人たちは、「平和憲法を持つ我が国を攻めてくる国はない」と自信をもって言うのだそうだ。不思議だ。

 

大統領が不戦の選択をするまでには、迷いも多かったと思う。だが、戦争にお金をかけなければ医療を無料にでき、教育費も義務教育は無料に、給食も幼稚園から高校まで学校で実施している。まず教育だ。軍隊廃止時のスローガンは、

       ◎兵士の数だけ教師をつくろう

       ◎兵舎を博物館にしよう 

       ◎武器をバイオリンに替えよう 

現在の博物館は以前の兵舎であり、外壁には銃弾の後がついていた。


1月下旬、8日間のコスタリカツアーに参加した。8日間とはいえ、往復の旅程に半分取られた後の4日間がコスタリカ滞在で、施設見学とエコツアーが2日ずつだった。同行の講師はジャーナリスト伊藤千尋氏。勉強不足は旅行中に補えるかな、と思った。コスタリカの経済の基本は農業で、コーヒー・バナナ等が主。1日目はコーヒー農園の見学、午後は火山と山麓の温泉。温度や風情の違う温泉を楽しんだ。夕方ホテルに着くとすぐ、伊藤氏の講演「エコツアーリズムと自然エネルギー」。発電量のほとんどは再生可能エネルギーに依る。特に地熱発電が大きい。日本も技術援助を続けているそうだ。それにしては日本で地熱発電のことはあまり聞かない。

 

水辺のエコツアー。小さなボートで熱帯の川辺に住む動植物を見た。水鳥やイグアナ・ワニ。樹上のサルやナマケモノ。水面の花々等さながら桃源郷。生物多様性の模範地域であるこの国は、世界の0.03%の国土に6%の生物種。チョウ類はアフリカ大陸より種類が多いという。


3日目。サンホセ市内、国会、選挙最高裁判所、民主主義形成研究所などを訪問。国会は開かれておらず内部を見学したのみ。選挙裁判所で選挙の方法や仕組みについてのレクチャーがあった。大統領選挙では子どもの模擬選挙が行われるとのこと。大人同様の投票用紙や収集箱を使い、高校生がボランティアで選挙管理委員の役をする。学校や家庭で選挙の話に沸くそうだ。そして大人たちの投票結果と大差ないのだというから面白い。国立劇場、博物館見学。

 

4日目午前、国連平和大学見学。バスの中で伊藤氏の講演会「平和憲法を活かすコスタリカ」。平和大学に着くと学校見学とミニ講義があった。高台の自然の中のすばらしい場所、300エーカーの広い土地は趣旨に賛同した人の寄付という。昼食はテラスの食卓で日本からの留学生も交えて。私たち6人の班は男女二人を迎えた。就学前の幼い二人をおいて来ている若い母親。男性は経験豊富な医師で、国境なき医師団で10年間働いたそうだ。有意義な一時だった。

 

午後は元教育大臣レオナルド・ガルニエル氏とコスタリカの教育をテーマに懇談。講演の後、質問は引きも切らず、時間は大幅に延長してしまった。嫌な顔もなさらず、質問に誠実に答えてくださっているガルニエル氏の姿を見て思った。コスタリカは大統領をはじめ、上に立つ人、つまり偉い人が本当に偉い、と。ずいぶん遅くなって会見が終わった。隣の部屋には夕食の準備が整えられていた。そして、また和やかな会見の続きのような時間が流れはじめた。旅の最高の夜であった。