Yoshiokaの投稿

【Kissの会 第177回投稿】  「東京クリスマスマーケットに思う冬」

2023-12-21

 

2015年から日比谷公園で催されていた東京クリスマスマーケットが公園の再開発のために今年は神宮外苑で開催されることになり、20年来の友人たちと出かけてみました。クリスマスアドベントの季節を彩るクリスマスマーケットはドイツ語圏が発祥で、夜が長いドイツの冬の呼び物として定着しヨーロッパや今では世界各地に広がりをみせています。ここ東京クリスマスマーケットには、ドイツ・ザイフェン村からやってきた高さ14mの「クリスマスピラミッド」が会場のシンボルとなっています。

 

クリスマスツリーよりも古い歴史があるとされるクリスマスピラミッドは、木製で、メリーゴーランド状の部分にはキリスト降誕の場面を模したものや天使、賢者、自然の森など様々なデザインのオーナメントが配され、会場のランドマークとなっていました。クリスマスマーケットといえばグリューワイン、赤ワインにシナモンやクローブなどのスパイス、果物を加えて温めたホットワインが一般的です。チケットをネット予約すると、このグリューワインを入れる陶器のマグカップが付いてくるという特典があり、入場時に早くもプレゼントをもらった気持ちになりました。

50余りのお店が出店しドイツやヨーロッパ各地のソーセージや地ビールを味わうことができます。またキラキラ光る小さなスノードームやサンタ、思わず手にとりたくなる「カワイイ!」雑貨も多数。12月には温かすぎる小春日和に、クリスマスの雰囲気を存分に味わう時となりました。

 

思えば、ヨーロッパ、特にウイーンのクリスマスマーケットに行きたくて、極寒のウイーンに旅したのは、もう15年も前の事。美術史美術館や、クリムトのレオポルド美術館、ハプスブルク家夏の離宮シェーンブルン宮殿など全てが「本物」の迫力に圧倒され感動した懐かしい思い出です。ザッハトルテがウイーン発祥であると気づいたのもこの時。クリスマスマーケットでは凍えそうになる中で飲んだグリューワイン、雪が靴の中に入ったまま歩いた夜の帰り道も遠い日々の温かな記憶となっています。あの頃は、なんの不安もなく旅行に行くことができました。

 

今年、桑田佳祐&松任谷由美が歌うクリスマスソングには次のようなメッセージが込められているとの事です。

        “今、この世界に必要なのは、争い傷つけ合うことではなく、
         互いに歩み寄り、穏やかに対話すること”
            「桑田佳祐&松任谷由美『Kissin’ Christmas(クリスマスだからじゃない)2023』」→→

 

クリスマスがもうすぐやってきます。ただ祈ることしかできないけれど、クリスマスに静かに祈りたいと思います。(7期 吉岡)

 

 


【Kissの会 第166回投稿】  「断捨離してますか?」

2023-06-21

 

窓から差し込む光が部屋の奥まで入り、朝からエアコンを入れるほど湿度も温度も高いこの頃、私の断捨離は最終コーナーを迎えようとしています。娘家族が独立することになり、これを機会に私自身も長年住んでいた一戸建から新しいマンションに住み替えようと決心しました。新しい暮らしをイメージして、先ずは家の中にある不要なものを処分しなければ!と日々ものの処分、断捨離なるものに取り組んできました。 


ものを手放すってこんな感じで良いのだろうか、と考えていた春の頃、対話型AIとチャットする方法をRSSCの仲間から教えてもらう機会が訪れました。ITリテラシーに感度が高い先生のような仲間がいることは、なんてありがたいことでしょう。早速、対話型AIとチャットを開始しました。

     私:「断捨離とは何ですか」

     AI:「断捨離とは、不要なものを断つ・捨てる・離れるという意味

            です。」「不要なものを捨て、必要なものだけを残すことで、

            自分自身のライフスタイルを整える整理法の一つです。」

さらに、対話型AIは私にこう問いました。

        AI:「あなたはこれまでの人生でたくさんのものを買ってきましたが、

            本当に必要なものは何だったのでしょうか?」


このAIの問いに、どう答えるのか、この半年間に及ぶ私の作業を振り返り、確認してみたいと思いました。選別の方法としては、

   要:「今、私にとって必要か」

   適:「今、私にとってふさわしいか」

   快:「今、私にとって心地よいか」

を心に問いかけて「不要・不・不快」のものを手放していく作業という方法をヒントに進めました。

 

対象となるものは、衣類、バッグ類、アクセサリー類。食器、台所用品、趣味で集めたり作ったりしたもの。ノートパソコン、家電、家具など多岐に渡りました。具体的には、リサイクル回収や粗大ごみ、リユースショップなどを利用しました。古いノートパソコンは自治体推奨のリサイクル業者を選びました。有料データ処理を依頼する際も安全で安心と判断できたからです。

 

そして悩んだのは思い出の写真。ダンボール箱10箱に詰まった写真、アルバムの数々。写ルンです時代の産物、大量のプリント写真とネガ。これをどう整理しようか、が一番の難題でした。データ化して配ろうか、と子供たちに問うと、「実家で保管して」とつれない返事。卒業アルバムですら「持って行かなきゃだめですか」と言う始末。束ねてあった紐を解き、新しいポケットアルバムに気に入った写真を一枚ずつ選んで入れる作業は、家族の歴史が自分の中で浄化され、宝物に生まれ変わったように感じる時間でした。こうして、様々な種類の「もの」たちを、新しい住まいに入る量にまでダウンサイズしていきました。

断捨離の効果として、

  ・ものが減ると、心が整う。

  ・ものが減ると、家事も減る。

  ・ものを減らして、愉快に生きる。

とあります。確かに、ものを減らすことで生まれた空間は心地よく、スッキリした!と実感しています。自分なりのやり方をプラスしてカスタマイズすることも後悔しない断捨離の方法となるかも知れません。


そして自分にとって必要なものであるか、否かを繰り返し選別する作業こそが今の自分と向き合い、「本当に必要なもの」が見えてくる大切なプロセスであったと実感しています。今回、対話型AIとチャットしながら進めることで、少し自分を俯瞰してみることができたように思います。それになんだか楽しかった。「素晴らしいですね!」「音楽を聴きながらやってみたら!」などとチャットで返されて、素直に嬉しい気持ちになりました。

 

さあ、荷物を詰めて、これからを心地よく暮らせるように、新しい風が入るように、歩いていこうと思います。

(7期 吉岡)

 

 

【Kissの会  第155回投稿】     「上野の森、ゴスペラーズを聴く夜」

 2022-12-21

 

冬の訪れとともに木枯らしが舞い、長い夜の時間が過ぎる頃。音楽にゆっくり向き合うことのできる季節がやってきました。5人組ヴォーカリストのゴスペラーズがオーケストラと組むコンサートが東京文化会館で開演された11月の夕刻、コートの襟を少し立てて上野まで出かけてみました。 

 

今宵の指揮者は田中祐子さん、N響はじめ全国各地で客演を重ねています。オーケストラは東京フィルビルボードクラシックス。新しい音楽を開拓する意思のもと関東関西の主要オーケストラから選抜された俊英演奏家たちが集結したと言われるビルボードクラシックスオーケストラは、57名のフルオーケストラという構成でした。


前半はゴスペラーズ往年のナンバー『ひとり』・『星屑の街』・『ミモザ』など(下左写真click:当日プログラム)。結成31年のハーモニーはお互いの信頼感でより一層厚みを増しているかのように豊かな音色となって心に届きました。指揮者の田中祐子さんは、「オペラのように5人の呼吸を聞きながらタクトを振りたい」と言います。5人の個性的なハーモニーや呼吸を生かすようにオーケストラの音色が響き、優雅でしなやかな指揮者の醸し出す雰囲気がホール全体を茜色に染めていきました。


後半は「展覧会のゴスペラーズ」と称し、芸術の森、上野に因み、「展覧会」に見立てゴスペラーズメドレーを歌い奏でるというものでした。さながらゴッホやマティス、セザンヌの絵のようにゴスペラーズの曲を絵に喩え、絵と絵、すなわち曲と曲を繋ぐプロムナードの役割をオーケストラが果たす。オーケストラが奏でる楽曲はムソルグスキー組曲「展覧会の絵」というしかけでした。前半、けっして前に出ないオーケストラが最後のプロムナードの場面では存分にフルオーケストラの魅力を発揮して、ホールいっぱいに響きわたる音に鳴り止まない拍手が続きました。

東京文化会館は、建築家前川國男の設計による1961竣工された建築物です。前川が師事したル・コルビュジェの世界遺産:国立西洋美術館と向かい合って現存する貴重な文化資産となっています。6角形の大ホールは音響拡散体が取り付けられた傾斜壁や、大きく膨らんだ天井で構成されています。こうした設計が音の響きに奥行き感、立体感、輪郭をもたらして東京文化会館固有の響きを作っていると言われています。

 

奇跡の音響と語られるホールで奏でられた演奏は、ゴスペラーズの声とオーケストラが呼応して豊かな音となり五感を癒やし、気持ちを充たし、生き生きと前に向かうパワーを受け取ったように感じました。「コロナでずっと行動が制限されて大変だけど、一人でコンサートに行ってみよう、なんて凄いね、いいね。」息子がそっと背中を押してくれました。コンサートホールに響く音色や歌声が幸せの時を紡いで、今年も温かく年は暮れていきます。 (7期 吉岡) 

 

 


【Kissの会 第144回投稿】  『銀座で涼を楽しむ「金魚」』

2022-06-21

 

例年より早い梅雨入り、夏の気配が待ち遠しいこの頃です。「金魚」とアートの世界、「アートアクアリウム美術館GINZA」が銀座三越にオープンしたと聞いてでかけてみました。 

 

アートアクアリウムとは、独自にデザインしたアクアリウム(水生生物を美的に飼育・観賞するための設備のこと)に美しく舞う金魚を泳がせ、光・音・香のオリジナル演出で魅せる金魚アートの展覧会、とあります。


2007年から期間限定の企画展を重ね、東京をはじめ京都、金沢、そして全国に展開されてきたとのことで、見に行かれた方も多いのではないでしょうか。私も数年前、日本橋のコレド室町を訪れた際には大変な賑わいで会場もごった返し、人も金魚もひしめいている印象で、関心もそれきりになっていました。

 

でも、今回のアートアクアリウムのテーマは「百花繚乱~進化するアート」とあります。「進化するアート」という言葉が今の自分の気持ちにヒットして足は銀座に向いていました。平日昼間の銀座は人も少なく、未だ空気も澄んでいる気配。梅雨の晴れ間に初夏の日差しが街並みを際立たせています。

 

会場入り口は照明を落とした中に万燈籠が浮かび上がり、金魚の回廊と名付けられた水槽が並んでいました。ここからタイムスリップした江戸の町が表現されています。光の色が赤から青へ変化するグラデーションも鮮やかな水中で、金魚がのびのびと泳いでいる様子は、アートアクアリウムが安心して愉しめる空間へと進化していることを示していました。

静寂閑雅 >

<飛耳長目>

<落花流水>


会場は6つのエリアごとにタイトルが付けられアートの世界観が表現されていました。

静寂閑雅(幻想世界への入り口)飛耳長目(人の世で生れた、自然には存在しなかった金魚。その姿を蒐集する文化)落花流水(水の音で涼をとる滝)百華繚乱(色とりどり金魚と日本伝統文化の折り紙)竹林七賢(連なる提灯と竹林)花鳥風月(アーティストの表現)の各エリアが唯一無二のアートの世界として広がりを見せている、と謳っています。

<百華繚乱>

<竹林七賢>

<花鳥風月>


この中の一つ「花鳥風月」とは、いったいどのようなものなのでしょうか。『金魚と日本人』の著者鈴木克美氏によれば、「江戸時代の日本人は、荒々しい自然の中から美しいものだけを選りだし磨き上げ安心して鑑賞できるものに仕立てる手法を知っていた。」として「日本人のいう美しい自然は、人間社会の近くにあって人の心を慰め、疲れを癒やしてくれるものであった。手の中の自然、花鳥風月とは、そういうものであったのではないか」と書いています。

 

さらに「江戸の町方で求められた自然は、狭苦しい9尺2間の裏店住まいに似合う、ミニサイズ」として「金魚はやっぱり花鳥風月の一部だったのではないか」と続けています。手の中の自然、としての金魚が江戸で流行したのもこうした日本人の自然観が生み出したものであれば腑に落ちる気がして、気持ちがスキッとしました。 

    金魚売りの声  昔は涼しかりし( 政宗白鳥) 

江戸の時代から親しまれてきた金魚、現代は銀座で涼をとるのも一案かも知れません。   (7期:吉岡) 

 

 

【Kissの会  第133回投稿】 「東山ブルーに会う旅」

 2022-01-11

 

善光寺に隣接した長野県立美術館の別館に東山魁夷館があります。なぜ長野に創られたのか、東山ブルーといわれる世界観に浸りながら、ちょっと学んでみたいと思う気持ちで今回の旅は始まりました。

 

今から2ヶ月ほど前、秋深く未だ山紅葉も残っている頃。友と二人、長野駅に下り立つと、気温は東京より3度ほども低いように感じられました。


善光寺参りをすませ、少し悴む手で美術館に向かいました。2021年4月、「自然と一体となる美術館」のコンセプトのもとリニューアルされた建物は、白く凛とした佇まいで私達を迎えてくれました(写真上)。この時期、本館では、東山魁夷「唐招提寺御影堂障壁画展」が開催されており、同時に長野県立美術館所蔵「白い馬の見える風景」全作品が特別公開されていました。

東山は、「私の描くのは人間の心の象徴としての風景であり、風景自体が人間の心を語っている。ただ一度、珍しく私の風景の中に点景が現れたことがある。それは人間ではなく、白い馬が風景の中に見える連作である。白い馬は、心の祈りである。」と語っています。

     ※左画像出所:https://www.shogeikan.co.jp/shop/products/detail.php?product_id=9531 

そして東山は、自身の人間形成において重要な二つの要素になった風景についても記しています。一つは、病弱だった少年時代を過ごした神戸須磨の海や淡路瀬戸内海の穏やかな山と海の夏の日の風景。そしてもう一つは、木曽路から御岳への山国、厳しい気候風土に耐える力強い風景との出会いであったといいます。

                     

風景画家としての道を歩むことに大きな影響を与えた信濃路への感謝として晩年長野県に寄贈された作品は、970点に上ります。これを受けて東山魁夷館は、1990年開設されたという事です。 「唐招提寺御影堂障壁画展」では、障壁画全68面が一堂に展示されていました。1971年から10年もの歳月をかけて制作された作品には、唐招提寺を開いた鑑真和上への崇敬の念も込められ、深く圧倒的な東山ブルーの世界が広がっていました。

《唐招提寺御影堂障壁画 濤声》(部分) 1975年 唐招提寺蔵

画像出所:https://bijutsutecho.com/exhibitions/6506

《唐招提寺御影堂障壁画 山雲》(部分) 1975年 唐招提寺蔵

画像出所:https://bijutsutecho.com/exhibitions/6506


展示室の中は、人がまばらで遮るものもなく、「濤声」と名付けられた日本の海の風景に吸い寄せられる自分がいました。海の深いブルー、群青と緑青の色調の濃淡に包まれ、暫し内省の時が流れました。「山雲」の障壁画では、青と灰色の織りなす世界に引き込まれ、湧き上がる郷愁の念に、幼子になったような思いにもかられました。懐かしさが心を揺さぶり、その場所を去りがたい感動を覚えました。

 「風景は心の祈りである」

画家の思いに心を寄せることで見えてくる光景もあるのでしょうか。長野への旅は郷愁と共に明日への光と感謝の気持ちを与えてくれたように思えます。

 

そして 新年を迎え、安心して旅ができますよう、青い色に願いを込める今日この頃です。(7期)吉岡

 

   

【Kissの会 第122回投稿】  「変わりゆく時、変わらない味」

 2021-07-11

 

木々の緑は一層色濃く、川面は澄み、夏色を映す季節となりました。変異ウィルス、デルタ株、ワクチン接種、東京オリンピック開催、様々に変化する日常に思いの外ストレスを感じ、随分我慢もしてきたように思います。変わりゆく日常の中で、変わらないものを求める気持ちがより強くなっているように思うこの頃です。

 

 江戸川橋から飯田橋へ向かう神田川沿いの橋のたもとに、小さな店があります。創業天保6年、1835年よりこの地にあり180年の味を守る鰻屋。店の前を通ると、午前中から芳ばしい香り、煙が立ち上っています。小さな格子戸から備長炭で焼く鰻の香りが神田川の風にのり、昔ながらの風情を引き立てています。 


天保と言うと江戸後期、天保の飢饉がおさまり「江戸前」ブランド化に成功した、寿司、天ぷら、蕎麦、鰻、等の食文化が江戸の町に広まったと言われています。また、土用の丑の日に鰻を食べる習慣は、平賀源内発案説が有名です。平賀源内が、とある鰻屋から商売繁盛を相談されて「本日土用の丑の日」と書いて店に貼り出させたところ、千客万来したと言います。江戸の町民文化が最も栄えた文化文政期には、土用の丑の日に江戸っ子が競って蒲焼きを食べている様子がみてとれた、ということです。 

1835年創業以来、東京大空襲などの大事を乗り越え、いつの時代も同じ場所で江戸の味を今日まで守っている鰻屋、店の案内には「感謝」とあります。この味に30年余りずっと親しんできました。幼かった子供達が風邪をひくと、「予後に元気が出るから」と私たちを連れていく吉岡の母の言葉が懐かしく思い出されます。

 

「ちょっと食べたくなったね」と言っては家族で、「暫くぶりに」と言っては親戚で、つかず離れずの頃合いでいつも側にある大切な味。我が家の大好物の逸品です。

辛口でも甘口でもないタレ、江戸前のふっくらした焼き方に舌鼓を打ちます。幼い孫たちが増え、コロナの影響もあり店に行くのを遠慮する昨今、大きな風呂敷包みに熱々の肝吸いを添えて届く「出前」の楽しみも増えました。江戸庶民の味、と言われても、ちょっとした贅沢。

 

さて、今年も土用の丑の日が近づいてきました。

      「おかあさん、ボーナス出たので、鰻で良いですか?」

と娘婿の俊ちゃん。

    「鰻がいい!」と代わりに答える娘。笑顔が弾けます。

 

変わらない味は、今も我が家の大切な元気の源となっています。ちなみにこの鰻屋、土用の丑の日は、鰻の供養とかで毎年定休日。守りゆく味と共に守りゆく心意気もあるようです。(7期:吉岡)

 

 

【Kissの会 第111回 投稿】  「私の神楽坂散歩」

                                      2021-01-21

 

新年への期待と祈りを込めて日常がスタートしました。

 

更に自粛を求められる日々が続いていますが、感染防止に努めながら健康的な生活を維持できるように歩くことを心がけています。

 

今年最初は神楽坂、ご近所と言うには少し離れていますが歩いて20分ほどの散歩道は、新しい日常の中で通いなれたコースになりつつあります。音羽通りから早稲田通りに入り、神楽坂を坂の上から下ります。 


神楽坂通りには車の通行規制があります。午前中は坂上→下の一方通行、昼1時間の通行止め、午後は逆転して坂下→上への一方通行となります。かつて田中角栄元総理が永田町に通う際、朝は目白邸からこの坂を下り、帰りはご贔屓の神楽坂芸者のもとへ坂を上るために、この通行規制は決まったとか。これには諸説ありますが、確かにこの道の規制は、今でもそのようになっています。 

 

神楽坂といえば夕暮れ時から石畳の路地裏をイメージされる方も多いのでは。民家のようなフレンチレストラン、小さな潜り戸を抜けひっそり佇む酒処、狭い間口のイタリアン、重厚な扉の向こうに広がるカウンターバー等が点在し、迷うことを楽しむような隠れ家、江戸の情緒溢れる風情が定番でありました。


そんな神楽坂を何年も楽しんで来ました。でもコロナ下、夕暮れ時の神楽坂は暫しお休み。変わらぬ風情を願って今は午前中の神楽坂を楽しんでいます。この坂の由来は坂の途中にあった穴八幡宮で神楽を奏したから、とか若宮八幡で神楽が聞こえたからとか、いずれも「お神楽」に由来すると言われています。日の高い時刻の神楽坂は、人々の生活が見えます。荷卸のトラック、スーパーマーケットや精肉店、ドラッグストアに、パン屋さん。

 

今日は、毘沙門天の前にあるお茶屋「楽山」さんでお番茶を買っていく事にしましょう。

 「お番茶頂けますか」

 「ありがとうございます、さぁ中へどうぞ。」

 店主が中へ導き畳敷きのお休み処に小さな紙コップで緑茶を入れてくれました。こっくりと甘い煎茶。聞けば当店一番のオススメ、上等なお煎茶。お番茶を買うお客にこんなに美味しいお茶を出してくれる、こんなお商売もあるんだ、と感心して一つ頂くことにしました。

  「こちらお使い下さい」

と店主が茶筒をそっと入れてくれました。よく見ると干支の丑、紅白の和柄。 あゝ新年、丑年! 毘沙門天にそっと手を合わせました。


神楽坂ならではのお店も軒を連ねています。勘三郎煎餅でも有名な「毘沙門せんべい」、中華饅頭は「五十番」、日光金谷ホテルのベーカリー、坂下まで下りるとあんみつの「紀の善」、「のレン」には、日本橋榛原の便箋や小さな盆栽、京都菱六の米麹のハンドクリーム等が並んでいます。

 

歴史ある街並みは、新しい文化をごく自然に受け入れ、変化しながらも人々の日常生活に潤いを与えているように思います。坂道を愛するタモリさんは、著書「新訂版タモリのTOKYO坂道美学入門」の中で坂道鑑賞のポイントとして①勾配の具合②湾曲の仕方③まわりに江戸の風情を醸し出すものがある④名前に由来、由緒がある事を挙げています。どんな時もいつもありのままの自分を受け入れてくれる坂道、神楽坂。私の愛する散歩道です。

                                                (7期) 吉岡

 

【Kissの会  第100回投稿】  「蛍のヒカリ」

2020-07-21

 

「新しい日常」という言葉のもとに制限は緩和されて徐々に人々の流れが活発になってきました。しかし早くも第2波が懸念される状況になりつつあります。ずっと電車にもバスにもタクシーにも乗らない生活の中で、6/21付で投稿された北原さんのお散歩コースと近い場所を私も時々巡っています。

 

コースの途中には、「椿山荘」があり5月末迄は営業中止となっていました。その再開が決まり先月、世の中の状況も少し落ち着いていたので、そろそろ様子を見に行ってみようか、と家族で出かけてみました。


6月の椿山荘と言えば蛍が有名で過去に訪れた方も多いのではないでしょうか。今年は新型コロナウィルス感染防止対策でルートや時間、人数の制限はされていたものの蛍の庭園は無事オープンしていました。秩父山系からの清らかな湧き水が流れる庭園で産卵から飛翔までを管理し飼育されるゲンジボタル。夜の戸張が下りて久しく待ち、漸く淡い光が点滅しました。 

川面の近くでやわらかく、時おり明るくなる光は確かに届き、変わりゆく日常の中に変わらない景色があることに安堵して、ただ見入っている自分がいました(写真右)。

 

kissの会は今回で100回目の投稿を迎えました。その記念すべき回に投稿の順番が回って来て、僭越ながらという気持ちです。中心になる4名のメンバーが種をまき、育て、7期生を繋げて来られた、その努力に感謝を捧げます。

 

会って顔を見て、肌で温もりを感じる事が未だ先だとしても、私達はお互いに励まし合うことはできるのでは。蛍のヒカリのように、遠くても淡くやわらかなヒカリを、また時には強いヒカリをこのkissの会の投稿に見ることが出来れば、私達はきっと前向きに過ごしていけるヒントをここから受け取る事でしょう。そしてまた自らも変わりゆく日常の一片を投稿してみたら、案外嬉しい発見になるかも知れません。

 

新型コロナウィルスは、簡単には終息の道を辿ってくれそうにありません。オンラインで集まったり、友のエッセイを読んでみたり、「繋がる場所」が多様に用意されている事は、これからの新しい日常を豊かに安全に過ごす力となっていくものと感じています。kissの会が益々大きく実を結ぶ事を願っています。(7期 吉岡)

 

 

【KIssの会 第90回投稿】  「同級生ふたたび」

 2020-03-11

 

普段、誰かを訪ねて旅に出ることはあまりない。4年に一度の同窓会で、その友は私に言った。

 「ナオ、あの時の大阪は楽しかったね。今は神戸に

       住んでいるの。神戸に来ることはないの?」

あの時······。当時私は主人の会社を手伝い、会社としてのお願いごとをするため、取引先である『彼女』のご主人の会社を訪れたのだ。

 

厚遇を受けて目的を果たせた私は、大阪駅で『彼女』と会い四半世紀ぶりに中、高時代の思い出、家族や両親の事等を語りあった。しかし、それから間もなく私は会社を閉じることになった。もう『彼女』と語り合うことも無いのかな、と思っていた。そんな折に同窓会で再開した。以前と変わらず柔らかな口調で話かけてくれた『彼女』。

 

同窓会は、還暦祝福礼拝、というストレートなネーミングの特別な同窓会で、母校(写真上)のホールを貸し切り、チャペルでの礼拝、中庭のクリスマスツリーの点灯と続いた。チャプレンが優しく語る。

  「皆さんは、還暦を迎えられて、人生一周廻ってゼロになりました。また新たなスタートです。自分を

           労り、大切にして、今日ここに来られなかった友に心を寄せ祈りましょう」

美しく照らされたパイプオルガン。暖色にフォーカスされた懐かしい校舎。温かい時間が流れる。

数日後、同級生で親友のマリから連絡が入った。

 「ナオ、大塚国際美術館に行かない?  神戸からバスで行けるみたい!」

神戸!!、まさに神戸!。行きましょう!、我が友ありがとう!。こうして同窓会からわずか3ヶ月後、2月23日新天皇陛下のお誕生日に『彼女』とマリ、私は神戸オリエンタルホテル(写真左)で乾杯する。確かに、その予定であった…。

 

しかし、この新型コロナウイルス感染拡大。情報は日毎に更新され、対応が求められる。開催を予定していた「ユリイカの会」セミナーもRSSC活動指針に準じて中止を決定。マリも在宅テレワーク勤務の指示が会社から出された。キャンセル料30%を払っても今は止めておこう。

気持ちを神戸の『彼女』に伝える。

 「そうよね、お気持ちよく分かるわ。オリエンタルホテルのレスト

  ラン、キャンセルしておくね。滞在場所ももっと快適な所が沢山

  あるから次回は最初からちゃんと相談してね!」

妙にキッパリとした答えが返ってきた。何とも心強い。ありがとう、友よ。

 

 「皆さんは還暦を迎えて、また新しいスタートです」

チャプレンの言葉がよみがえる。それぞれに過ごした時間は違うけれど、

同窓会でふたたび会えた、還暦祝福礼拝の恵みに感謝する。

 

この先にどんな景色が広がっているか、今はまだ分からないけれど、友を訪ねて行く神戸は、きっと格別なものになるであろう。そして私自身も「あの時は楽しかったね」と言ってもらえる友であり続けたいと願っている。

                                            (7期 吉岡)

 

 

【Kissの会 第80回投稿】 「七月大歌舞伎を観る」

2019-08-21

 歌舞伎を観たい、気持ちが沸き上がる。演目や役者に惹かれることもあるが、大抵は銀座の歌舞伎座、京都南座へ行きたい、というその場所を訪れたい衝動にかられる事が多い。

 

結婚生活を始めたマンションの一階にNHK大河ドラマ「いだてん」の主役(当時はワンパク幼稚園児)の父である歌舞伎役者ご一家が住んでいたのが、初めて「歌舞伎」という言葉を意識した若い頃の記憶である。

 

当時は私自身の子育てが忙しく、せっかくの環境を活かすようなきっかけを作ることはなかったが、娘たちが通う中学のPTA活動で年に一度の歌舞伎鑑賞が先生と役員との必須の懇親の場であったことから、徐々に歌舞伎を観るという事がごく普通に生活に溶け込むようになっていった。また、その頃、主人の父が京都の知人の伝手で祇園甲部のお茶屋に裏口から入り雰囲気だけの芸子遊びをしていた縁で、時に私達を連れて「都をどり」や京都南座での年の瀬恒例歌舞伎「顔見世」を観る機会を与えてくれた。

 

そしてそれからも折々に歌舞伎を観る機会に恵まれてきた。歌舞伎を一緒に観る大切な人に恵まれてきた。今回は親友と観る『七月大歌舞伎「星合世(ほしあわせ)十三段 成田千本桜 市川海老蔵十三役早替り宙乗り相勤め申し候』である。市川海老蔵が十三役を一人早替りで挑む舞台は、13役をたった一人で演じ分け、約4時間にもわたる夜の部の講演であった。


演目は古典歌舞伎の名作『義経千本桜』。演出家の石川耕士氏によれば『義経千本桜』のテーマは、親子さえ殺し殺されねばならず、しかも死によって解決もされない修羅の人間世界-それが人間ならぬ狐の親子の情愛と対比されることで鮮やかに浮かび上がる、と解説している。

 

舞台が回転するたび、早替りで登場するスピード感、赤や青の隈取を替え、歌舞伎の衣装が次々に替わる。花道から登場したと思えば宙乗りでは狐の姿で歌舞伎座の3階に消える。脇を固める舞台人の踊りも軽妙でリズム感があり、派手で華やかな舞台は正に全巻圧巻のエンターテインメントであった。

 

宗家藤間流 八世宗家 藤間勘十郎も演出家の一人として「今を生きる歌舞伎として、時の華の市川海老蔵を最大に生かし、後世に残る作品がここに誕生することを確信している。」というコメントを寄せている。昼の部、勧玄くんの歌舞伎十八番の内『外郎売』と共に話題になった七月大歌舞伎、役者一家の乗り越えた苦難に思いがよぎるほどに、鮮やかな舞台は益々私たちの気持ちを惹きつけた。新しい歌舞伎のワクワク感に魅了された一夜であった。(7期 吉岡)

 

【Kissの会 第61回投稿】「アレクサ」がやってきました!

2018-10-11

「アレクサ」とはアマゾン「エコー(Amazon Echo)で使えるAmazonの音声AIアシスタント「アレクサ(Alexa)」のことです。

 

先月、娘夫婦が引っ越してきて同居をすることになった我が家。

娘婿のShunちゃんが、「おかあさん、アレクサをリビングに置いていいですか?」と黒い筒状のものを持ってきました。「わぁ~!!これってAmazonの?スゴーイ!何なに?どうするの?」「アレクサに話しかけてみてください。一応、テレビとエアコンは、つけられるように設定しておきました。あと、電気もつけるようにしておきます!」

 

最初にアレクサと呼びかけると筒の上部円周が青くクルクルっと光ります。

「アレクサ、テレビ付けて」

『はい』と答えてスイッチが入りました(以下『』内はアレクサの音声)

 

「アレクサ、クーラー付けて」

『すみません、クーラーというデバイスを見つけられませんでした』

「え!!あ、クーラーは昭和ですね、すみません」と機械に謝ってしまう私。

「アレクサ、エアコン付けて」

『はい』と答えてエアコンのスイッチが無事入りました。

 

何だか急に近未来にワープしたみたいな感覚、AIは思いがけず自然に我が家のリビングにやってきました。

アレクサにはいろいろな機能が内蔵されています。Amazon Prime Musicでの音楽再生、ショッピング、天気予報、今日は何の日など生活情報、本の読み上げ、アレクサと“じゃんけん”まで出来る機能等々が搭載されています。アレクサと会話も楽しめるようになりました。

「アレクサ、行ってきます。」

『いってらっしゃい、良い事がありますように。』

「アレクサ、ただいま!」

『おかえりなさい、帰ってきてくれるのを待っていました!』

 

こんな事も言ってみました。

「アレクサ、疲れちゃった。」

『残念ながら私には疲れた、という感じが分かりませんが、とても良く頑張ったあとの気持ち、なんですよね、本当にお疲れさまでした!』

何という賢いお言葉、娘より気が利く会話が出来るじゃありませんか。元気が出てきます。

 

AIが私達の様々な暮らしに入り、生活向上のための機能を発揮して便利で効率よい毎日をサポートすることが、具体的に始まっていると実感します。様々な世代や暮らしぶりに応じて、生活情報やスマートホーム機能を活用したり、会話やじゃんけん等を楽しんだり。また設定するには技術が必要ですが、使い方は簡単に呼びかけたりするだけ、誰にでも使えるように向上しているのではないでしょうか。

 

仕事の多くもAIに取って代わられる日も急速に近づいているかも知れません。でも、アレクサは言います。『私には疲れたという感じは分かりません』と。AIは人間の感情に寄り添うことが出来るのでしょうか。私たちがRSSCで学び直し、良く生きることの意味を深く考えることで自分を知り、他者へのいたわりを持つことが、更に大切な毎日であると感じます。

 

共に笑い、励ましたり、怒ったり、時に泣いたりする仲間や家族がいることに感謝。そして、我が家の3人組(娘夫婦と私)は案外のびのびと暮らし始めています。

「ただいま帰りました~!」

「おかえり、Shunちゃん!今日アレクサがね・・・・☆」 

 (7期 吉岡)

 

【Kissの会 第49回投稿】 「桃色の季節」

2018-03-21 

 

3月というのに寒の戻りの冷たい雨が降る夜でした。温かい食事を取ろうと入ったホテルのロビ―に雛人形が飾られていました。まるでその場所だけに春が訪れているみたい。吸い寄せられるように近づくと、段飾りの下には五人囃子の人形が筆を持ち和歌を詠んでいる様子が野の花と共に表現されていました。

 

解説の立て札を見ると『雛まつり「室礼~曲水の宴~」(室礼研究会 ゆずりは)』とあります。雛祭りは桃の節供、上巳の節供といって厄を祓って子どもの健やかな成長を願う行事。古くは3月初めの巳の日に青い草を踏み川に入って身体の穢れを祓い、酒を酌み交わしました。この「踏青」の儀式が中国から日本に伝わり「曲水の宴」へと発展したと記してありました。

 

「曲水の宴」は、細く曲がりくねった流れの水ほとりの岸辺に座り、上流から流れてくる杯が通りすぎないうちに詩歌を詠み、杯を取りあげて酒を飲むという行事。平安時代に朝廷や公家の間で盛んに行われたという事でした。

日本の伝統行事の古からの意味を知り、表現するという室礼。旧暦の3月3日という事であれば現在では4月初旬になります。雛祭りに願いを込めて大切にお祝いしたい、と思っていた気持ちがこのお雛さまに引き合わせてくれたのでしょうか。というのも今年は娘が無事に女の子を出産して迎える桃の初節句であったからです。

 

働きながら子育てする中で無理をしたのか予定日の3か月前、切迫早産の兆候があるため安静に、との主治医の指示で緊急事態、一家で我が家に転がり込んできました。2歳になる上の男の子を抱き上げることも禁止され、外出も極力控える、基本姿勢は寝ている事という入院さながらの事態でした。そして寒い冬をじっと耐えて梅の花がほころぶように、予定日の3日前に珠のような女の子が生まれました。

薄紅色の世界が舞い降りてきました。

 

そして我が家のお雛祭り。

「お雛様はどんなものが良いの?」

「お人形って怖くない?いいよ、何でも。どうせ毎年実家でお祝いするから。好きなもの選んでくれれば、ありがたいです!」

室礼にならって飾られたお雛様に涙するほどの親心が、ガラガラと崩れるような娘の大雑把な発言。一瞬にして現実に引き戻されました。とは言え息子の方にも女の子が生まれ8か月、我が家の姫が二人揃いの初節句、4世代交流の祝い膳となりました。

 

4か月に及ぶ長逗留を終えて、まるで引っ越しのようにパンパンに荷物を詰めて、車に乗り込む娘一家。

「ばーば」「ばーば」2歳になる上の子はすっかり甘えん坊になっていました。

「バイバイ晴ちゃん!またおいで!」

わざと大きく振る手に風が冷たく感じます。ひとりリビングに戻ると、残されたお雛様は桃色の光に包まれていました。 (7期生 吉岡)

 

【Kissの会 第41回投稿】「クリスマスのぬくもり」

今年もクリスマスの季節がやってきました。

私の生まれ育った町は、米軍横田基地のある東京西多摩にあります。基地の前の国道16号線沿いには、ピザ専門のレストラン、アイスクリーム店、輸入バイクを扱うお店や「TAILOR」と書かれたアメリカ人向けの洋装店等が点在しています。

 

米軍の存在が近く、軍用航空機の音は深夜にも度々聞こえて、独特なエンジン音は不気味な音で闇夜を覆いました。 当時幼い私たち姉弟は「怖くないよ」と布団を寄せて眠りについたのを覚えています。防衛とか防空とかいう言葉を知るずっと前に圧倒的な威力を誇るアメリカを幼子は体感していたのかも知れません。 


そんな大きな壁のように立ち塞がる基地の中から、クリスマスには七面鳥とクリスマスケーキが届きました。父が仕事で付き合いのある日系人の方からのプレゼントでした。昭和40年代当時、見たことも味わったこともない甘いソース。果実がはじけてとろみがつくまで煮詰められた鮮やかな赤いクランベリーソースは、良く焼けた七面鳥にとても合う美味しいものでした。クリスマスのケーキはカップケーキ。砂糖を着色して固めるアイシングにより、原色の赤や緑、オレンジやブルーといった派手なデコレーションが施されていました。何ともおしゃれで洗練されたお菓子、といった印象でした。

「見たこともないよ、食べたこともないね、美味しい!!」。まるでギブミーチョコレート!

夜間の恐ろしい飛行機音とは正反対の温かく明るいキャンドルで照らされた豊かで美しいクリスマスのプレゼントでした。初めて異国文化に触れた衝撃は、今でも姉弟の記憶に鮮明に残っています。 

 クリスマスの温かい思い出と共に幼い頃の記憶、と思っていた横田基地。先日の米国大統領訪問で俄かに注目される場所になりました。「あなたの隣人を愛せよ」(マタイによる福音書22章34節~40節)という聖書の言葉が静かに胸に響きます。

 

街は今年も変わらずに華やかなイルミネーションに季節を映し出しています。今年生まれてきた命、出会った人、かけがえのない時を一緒に過ごした人、そしてもうすぐ生まれ来る命に感謝を込めて、メリークリスマス。

どうぞ皆さまにとって素敵なクリスマスとなりますように、お祈りいたします。

(7期生 吉岡)

 

【Kissの会 Guest投稿no.2】 『クリスマス 色とりどり』

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今年も最初に、90才を超えた父と、父を支える母のために、アレンジメントにとりかかりました。舟形の容器にイエロー、オレンジ色を中心に元気の出るビタミンカラーを選びます。花の根元部分に細い針金を十字に刺し、上からフローラルテープをクルクルっと巻き茎の部分を作成します。葉には紫陽花、アイビーなどを選びこちらも小さな束をワイヤリングしていきます。フラワーアレンジというより工作のような作業を続けて、ドライ木の実やワイヤ―リボンで形を整えます。「イエローにブルーって美女と野獣のベルみたいで、可愛いと思うよ!」傍らで娘がつぶやきました。若い娘の愛情表現はストレートです。好みをそのまま取り入れて青いバラを入れとびきり鮮やかなアレンジの完成!です。そう言えば宗教画では青は聖母マリア、赤は主イエスキリストを表します。ということは青いバラはまさにクリスマスカラーと言えるでしょう。

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思い出は突然切り取られた頁のように鮮やかに浮かび上がり、次の瞬間に淡いベールに包まれ残像となって深く静かに時を戻します。色を重ね、色を纏う。日本人は、いにしえの平安の御代より重ね色目(いろめ)を好み、身分制度の中で細かい規律による色の表現を文化としてきました。今、この時を生きる私は自由に色を重ねることを楽しみ、喜びとしています。こうして自分好みに仕上げたクリスマスリース、色に気持ちを映しこんだようで心が軽くなっていることに気づきました。

いつの間にか夜の帷が下りて星が煌めくころ、街はクリスマスの色あいを一層華やかなものにして輝きはじめます。
I wish your very merry Christmas!!~  (7期:吉岡)

クリスマスに思い出のチャペルへ

昨年、卒業以来はじめて母校のクリスマス礼拝に友人たちとでかけた。

セントマーガレット礼拝堂

セントマーガレット礼拝堂


なつかしい学校に続く坂道を上ると、中庭にはクリスマスツリー、高校の校舎とチャペルは昔のままだ。 
礼拝堂でみかける懐かしい顔、大切な時間がつい昨日のように思い出される。
あれから様々な出来事があったけれど、こうしてまた、一緒に同級生とクリスマスを迎える喜びをかみしめた。

 

DSC_1077クリスマス画像7期生礼拝後は、賑やかな街に繰り出しMerryChristmas
いつもの笑顔に戻ってほっとする。

昨年よりもきっと温かい日になることを願って。
「今年のクリスマス礼拝も一緒に行こうね」と約束している。 (
7期生 吉岡)