【Kissの会 ゲスト投稿no.99】

                                               「手帳の空白のページ   ~愛犬ロンと戻ってきた平穏な日々~

 

2023-07-21  (7期)  島崎 明さん

長年愛用している手帳があります。勤めていた会社から、退職後も毎年末に必ず送られてくる何の変哲もない黒表紙の手帳(右写真)です。

 

在職中は仕事の予定などを細かく書いていて、今も毎月いろいろなことを書いています。たとえば、今年のある月のページには、歯科検診、内科受診、定年退職の祝いに妻子から贈られた来月で9歳のトイプードル、ロンのトリミング、友人との母校界隈散策、妻との都内観光等々。細かく書くのは昔からの癖ですが、年齢とともに多くなってきている物忘れの予防と、後日記憶を思い出すきっかけとして、今でも詳しく記入しています。

 

しかしそんな手帳にも、3年前の2020年9月から長い空白のページが生じてしまいました。そして、この間は、犬にかまれた痛い思い出の他には、一緒に暮らしている妻との記憶さえ、残っていません。


その代わりに手帳には調べたり、妻に尋ねたりして、後から私が書き加えている事柄があります。たとえば2020年9月20日、地元の大学病院へ救急搬送、ICUへ(病名:意識消失、熱中症、低ナトリウム血症、コロナの院内感染)。

再び予定を書き始めていますが、まだ家に閉じこもっていることの多かった2021年7月、かかりつけ医への通院予定には、先生の言葉が書き足されています。

   「眠れないのは気にする必要はない。せっかく助かった命、長生きしよう。

    生活習慣病を良くしよう。水を持って、外へ出よう。」

その通院時にはっきりと分かりました。私と同じで運動が嫌いで、暑かったり、寒かったり、雨が降ったりすると、すぐに抱っこをせがむロンに噛まれながらも、毎日妻と二人プラス一匹で散歩していたからこそ、体調が回復したのだと……。(左は事務局によるイメージ写真) 


そして2023年7月、相変わらず箸の使い方が下手な私が落とすおかずを狙って、朝夕の散歩を終えたロンが、テーブルの下で待ち構える平穏な日々が戻りました。今月の手帳には、新幹線で遠方の親友と5年ぶりに会う、楽しみな予定も書かれています。